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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(れ)13号 判決 1955年1月21日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役十月及び罰金千円に処する。

但し、右懲役刑については、本判決確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

原判示第二の事実(脅迫)について被告人を免訴する。

理由

弁護人大蔵敏彦の上告趣意第一点について。

原判示第二脅迫の事実については、原判決の宣告後本件記録の当裁判所に送致された昭和二九年六月三〇日までに既に三年以上を経過し、しかも、その間、公訴時効中断の事実のないことは、本件記録上明らかである。とすれば右犯罪に対する公訴時効の完成したことは所論のとおりであって、右事実については被告人に免訴を言渡すべきであって、この点において原判決は破棄を免れない。

同第二点について。

所論のごとく裁判が迅速を欠くことは、極めて、遺憾とすべきことであるが、裁判が迅速を欠いたからといって、これをもって、直ちに原判決破棄の事由とすべきでないことは既に当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決参照)論旨を採用することはできない。

よって刑訴施行法二条三条の二刑訴四一一条五号を準用し、原判決破棄の上旧刑訴四四八条四五五条三六三条四号により原判示第二の事実(脅迫)について被告人を免訴すべきものとし、なお原判決の確定した脅迫以外の事実について法律を適用すると、被告人の窃盗の所為は刑法二三五条に、賍物牙保の所為は同法二五六条二項に各該当するところ、被告人には原判示の如き前科があるから同法五六条五七条に従い再犯加重をなし、なお右は刑法四五条の併合罪であるから同法四七条一〇条一四条により、罰金につき罰金等臨時措置法三条刑法六条一〇条により、その刑期及び罰金額の範囲内において被告人を懲役十月及び罰金千円に処すべく、右懲役刑については情状により刑法二五条に従い本裁判確定の日より三年間その刑の執行を猶予すべきものとし更に同法一八条により罰金不完納の場合は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとし主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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